日本人にはなじみの深い百人一首。
滋賀県大津市は「かるたの聖地」と
呼ばれ、親しまれてきました。
ここでは、大津が「かるたの聖地」と
呼ばれる由来をご紹介します。

「百人一首」とは

「百人一首」は、優れた歌人100人をあげて、1人につき1首ずつ、あわせて100首の優れた歌を選び出したものです。最も有名な「小倉百人一首」は藤原定家が京都嵯峨の小倉山で和歌を選んだとされることから、「小倉百人一首」と呼ばれています。
現在では、小学校や中学校の国語の授業で古典に親しむための教材として扱われています。

「競技かるた」とは

「競技かるた」は、「小倉百人一首」かるたを用い行われる競技です。各自取札100枚のうちから無作為に選んだ 25枚を持札とし、読手の読み上げる札を取り合い、先に持札が無くなった選手が勝者となります。記憶力はもちろん、瞬発力や体力、集中力も試される競技ですが、老若男女問わず楽しむことが出来る点も魅力の一つです。
「競技かるた」は「かるた遊び」が発展したものと言われ、地域や場所によってルールはさまざまでしたが、1904年にジャーナリストの黒岩涙香が「東京かるた会」を創設し日本橋でかるた大会を開催したことが現在の「競技かるた」の始まりとされています。

天智天皇「古今偉傑全身肖像」

かるたの聖地 大津の由来

大津市にある近江神宮は、小倉百人一首の巻頭を飾る「秋の田の かりほの庵の 苫を荒み わが衣手は 露にぬれつつ」を詠んだ天智天皇が御祭神です。そのことから「かるたの殿堂」と呼ばれ、競技かるたの日本一を競う「競技かるた名人位・クイーン位決定戦」を始め、数々の大会が開催されています。
その他にも大津市には百人一首歌人である蝉丸を祀る神社や、紫式部に関係の深いお寺など百人一首ゆかりの場所が数多くあり、「かるたの聖地」と呼ばれるようになりました。

大津ゆかりの句

百人一首には大津ゆかりの句がいくつもあります。句に思いを馳せながらゆかりの地を周るのもおすすめです。

一首目

秋の田の かりほの庵の 苫を荒み
わが衣手は 露にぬれつつ
作者
天智天皇
意味
秋の田のそばにある仮小屋の 屋根の編み方が粗いので 私の着物の袖は 夜露にしきりに濡れ続けているよ。
ゆかり
作者の天智天皇は、667年に飛鳥から大津へ都を移しました。近江神宮は天智天皇を祀るため、宮跡に近い場所に創建され、境内には百人一首の歌碑が建てられています。

十首目

これやこの 行くも帰るも 別れては
知るも知らぬも 逢坂の関
作者
蝉丸
意味
これがまぁ、東国へ行く人も都へ帰ってくる人も、互いに知っている人も知らない人も、別れてはまた逢うという逢坂の関なのか。
ゆかり
句に詠まれた逢坂の関は、大津市にあり、現在は記念公園にもなっています。蝉丸は芸能の神様として、逢坂の関近くの関蝉丸神社に祀られています。

五十七首目

めぐりあひて 見しやそれとも わかぬ間に
雲がくれにし 夜半の月かな
作者
紫式部
意味
めぐり会い、見たのかどうかわからぬうちに雲に隠れてしまった夜中の月。そのように、久しぶりに会ったあの人も慌しく帰ってしまわれたことよ。
ゆかり
作者の紫式部は、大津市にある石山寺で源氏物語を起筆したと言われています。この句は、紫式部が昔なじみである友人と逢坂の関で出逢い、別れた際のことを詠ったと言われています。

六十六首目

もろともに あはれと思へ 山桜
花よりほかに 知る人もなし
作者
前大僧正行尊
意味
一緒にしみじみと懐かしく思っておくれ、山桜よ。花であるおまえのほかに理解してくれる人はいないのだ。
ゆかり
作者の前大僧正行尊は、12歳の時に大津市にある三井寺に入り、平等院大僧正、白河・鳥羽・崇徳の3天皇の護持僧(天皇の身を守るため祈祷を行う僧)などを務めました。

九十五首目

おほけなく うき世の民に おほふかな
わが立つ杣に 墨染の袖
作者
前大僧正慈円
意味
分不相応ではあるけれど、辛いこの世を生きる人々に覆いかけたいものだ。私が住みはじめた比叡山での仏の祈りを。
ゆかり
作者の前大僧正慈円は、10歳で父を亡くした後、11歳で大津市と京都市にまたがる比叡山に入り、14歳で出家しました。38歳で天台座主となり、中世日本の歴史書として有名な「愚管抄」を記しました。

大津の今

現在も大津市とかるたの関係は深く、近江神宮では競技かるたの名人位・クイーン位決定戦や、小学生から大学生までの全国大会が行われています。また、競技かるたに熱中する高校生の青春を描いた作品「ちはやふる」の舞台になったことがきっかけとなり、より多くの方が訪れるようになりました。2024年放送の大河ドラマ「光る君へ」の主人公紫式部は、百人一首の57番を詠みました。

漫画「ちはやふる」で脚光を浴びることとなった百人一首かるた。
作中でも大津の数々のスポットが、大会をはじめとする重要シーンの舞台となっています。
本サイト公開にあたり、作者の末次由紀先生からメッセージをいただきました!

漫画「ちはやふる」作者
末次先生メッセージ

百人一首をテーマとした大津市観光WEBサイト開設おめでとうございます!
私が大津で一番訪れたのも大津京から近江神宮にかけての一帯です。特に近江神宮の境内は四季に渡り何度も駆け抜け、その空気を感じてきました。
立派な朱色の楼門を持つ近江神宮ですが、通い続けるうちに、私はじつは大津の緑に会いにきているのだという気持ちになりました。
近江神宮のゆったりとした参道の樹木の大きさは、凛とした下ろし立てのシーツのように私たちを包み、かるたの空気に自然に導いてくれます。
文化につながる自然からの贈り物を頂く…そのような経験を、是非みなさんにもこのサイトを通じて味わっていただきたいです。

末次由紀

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